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    はてなブックマークに追加   【ホントの空き家問題】空き家が建っていても固定資産税が6倍になるの?  
 
 
 
空き家と更地の固定資産税
 
 
 
空き家が建っていても固定資産税が6倍になるの?
     
平成27年5月26日、増え続ける空き家の適正管理を促すために、

に空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空き家対策特措法)が全面施行されました。

その第15条の条文は以下の通りです。

(財政上の措置及び税制上の措置等)
第十五条 国及び都道府県は、
市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、
空家等に関する対策の実施に要する費用に対する補助、
地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。 
2 国及び地方公共団体は、前項に定めるもののほか、
市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、
必要な税制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

これを受けて平成27年に地方税法第349条の3の2が改正されました。

第三百四十九条の三の二
専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で
政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの
(前条(第十二項を除く。)の規定の適用を受けるもの及び
空家等対策の推進に関する特別措置法 (平成二十六年法律第百二十七号)第十四条第二項
の規定により所有者等(同法第三条 に規定する所有者等をいう。)に対し勧告がされた
同法第二条第二項 に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。

以下この条、次条第一項、第三百五十二条の二第一項及び第三項並びに第三百八十四条において
「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、
第三百四十九条及び前条第十二項の規定にかかわらず、
当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。

つまり空家対策特措法が施行された結果、

問題がある空き家が建つ土地については、

市町村の判断で
固定資産税の住宅用地の軽減措置の対象から外す


ことが可能になったわけです。


ではどのような空き家が対象になるのでしょうか?

空家対策特措法では問題のある空き家を特定空家と呼び、

以下のように定義しています。

(定義)
第二条 この法律において「空家等」とは、
建築物又はこれに附属する工作物であって
居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの
及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。
ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
2 この法律において「特定空家等」とは、
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態
適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
にあると認められる空家等をいう。

つまり空家対策特措法では問題のある空家=特定空家は、

@そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

A著しく衛生上有害となるおそれのある状態

B適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

C周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

の4種類に分類できると定義しているのです。


それぞれの文章は理解できますが、

果たして自分が所有する空き家がこれらに該当するのかしないのか、

アウトなのかセーフなのか、その線引きがよく分かりません。


そこで参考になるのが平成27年5月に国土交通省が公表した

特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)

です。

ガイドラインではどのような状態が特定空家に該当するのかを

具体例を挙げて解説しています。

@そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
1.建築物が著しく保安上危険となるおそれがある。
(1)建築物が倒壊等するおそれがある。
イ 建築物の著しい傾斜
・基礎に不同沈下がある。
・柱が傾斜している。
ロ 建築物の構造耐力上主要な部分の損傷等
(イ) 基礎及び土台
・基礎が破損又は変形している。
・土台が腐朽又は破損している。
・基礎と土台にずれが発生している。
(ロ) 柱、はり、筋かい、柱とはりの接合等
・柱、はり、筋かいが腐朽、破損又は変形している。
・柱とはりにずれが発生している。
 
(2)屋根、外壁等が脱落、飛散等するおそれがある。
(イ) 屋根ふき材、ひさし又は軒
・屋根が変形している。
・屋根ふき材が剥落している。
・軒の裏板、たる木等が腐朽している。
・軒がたれ下がっている。
・雨樋がたれ下がっている。
(ロ) 外壁
・壁体を貫通する穴が生じている。
・外壁の仕上材料が剥落、腐朽又は破損し、下地が露出している。
・外壁のモルタルやタイル等の外装材に浮きが生じている。
(ハ) 看板、給湯設備、屋上水槽等
・看板の仕上材料が剥落している。
・看板、給湯設備、屋上水槽等が転倒している。
・看板、給湯設備、屋上水槽等が破損又は脱落している。
・看板、給湯設備、屋上水槽等の支持部分が腐食している。
(ニ) 屋外階段又はバルコニー
・屋外階段、バルコニーが腐食、破損又は脱落している。
・屋外階段、バルコニーが傾斜している。
(ホ)門又は塀
・門、塀にひび割れ、破損が生じている。
・門、塀が傾斜している。
 
2.擁壁が老朽化し危険となるおそれがある。
・擁壁表面に水がしみ出し、流出している。
・水抜き穴の詰まりが生じている。
・ひび割れが発生している。

A著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(1)建築物又は設備等の破損等が原因で、以下の状態にある。
・吹付け石綿等が飛散し暴露する可能性が高い状況である。
・浄化槽等の放置、破損等による汚物の流出、臭気の発生があり、
地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
・排水等の流出による臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
(2)ごみ等の放置、不法投棄が原因で、以下の状態にある。
・ごみ等の放置、不法投棄による臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
・ごみ等の放置、不法投棄により、多数のねずみ、はえ、蚊等が発生し、
地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。

B適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(1)適切な管理が行われていない結果、
既存の景観に関するルールに著しく適合しない状態となっている。
・景観法に基づき景観計画を策定している場合において、
当該景観計画に定める建築物又は工作物の形態意匠等の制限に著しく適合しない状態となっている。
・景観法に基づき都市計画に景観地区を定めている場合において、
当該都市計画に定める建築物の形態意匠等の制限に著しく適合しない、
又は条例で定める工作物の形態意匠等の制限等に著しく適合しない状態となっている。
・地域で定められた景観保全に係るルールに著しく適合しない状態となっている。
 
(2)その他、以下のような状態にあり、周囲の景観と著しく不調和な状態である。
・屋根、外壁等が、汚物や落書き等で外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている。
・多数の窓ガラスが割れたまま放置されている。
・看板が原型を留めず本来の用をなさない程度まで、破損、汚損したまま放置されている。
・立木等が建築物の全面を覆う程度まで繁茂している。
・敷地内にごみ等が散乱、山積したまま放置されている。

C周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
(1) 立木が原因で、以下の状態にある。
・立木の腐朽、倒壊、枝折れ等が生じ、近隣の道路や家屋の敷地等に枝等が大量に散らばっている。
・立木の枝等が近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている。
 
(2) 空家等に住みついた動物等が原因で、以下の状態にある。
・動物の鳴き声その他の音が頻繁に発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている
・動物のふん尿その他の汚物の放置により臭気が発生し、
地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
・敷地外に動物の毛又は羽毛が大量に飛散し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
・多数のねずみ、はえ、蚊、のみ等が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
・住みついた動物が周辺の土地・家屋に侵入し、
地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある。
・シロアリが大量に発生し、近隣の家屋に飛来し、
地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれがある。
 
(3) 建築物等の不適切な管理等が原因で、以下の状態にある。
・門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等
不特定の者が容易に侵入できる状態で放置されている。
・屋根の雪止めの破損など不適切な管理により、
空き家からの落雪が発生し、歩行者等の通行を妨げている。
・周辺の道路、家屋の敷地等に土砂等が大量に流出している。

ガイドラインに書かれている具体例を全て書き出すと膨大な量になってしまいますが、

つまりは特定空家とはこのような状態になっている空き家だということになります。

ご所有の空き家が上記項目に1つでも該当するのであれば、

特定空家と見なされる可能性があるわけですから、速やかに改善する必要があります。


もっとも、

上記項目に該当すれば
固定資産税がすぐに6倍になるというわけではありません。


地方税法第349条の3の2にあるように、軽減措置がなくなるのは市町村から勧告がなされたとき。

そして勧告は助言または指導を行なって改善されなかった場合にのみ行なわれるのです。

空家対策特措法第14条
(特定空家等に対する措置)
第十四条 市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、
除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置
(〜中略〜)をとるよう助言又は指導をすることができる。
2 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、
なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、
当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、
除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置
をとることを勧告することができる。
(以下省略)

ですから、固定資産税の上昇を避けることを最重要視するのであれば、

市町村から助言・指導を受けた後に対処しても全然遅くはないわけです。

対処とはもちろん空き家の状態を改善することですが、

空家対策特措法の最大の欠点である

空き家じゃなくなったらこの法律の対象にはならない

ということも忘れてはならない重要なポイントです。
 
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「空き家を解体して更地にしたら
税金が6倍」のウソ
   
空き家を解体して更地にしても
税金は2.4倍にしかならなかった例
   
更地にした場合の固定資産税額を
自分で計算してみる
   
空き家が建っていても
固定資産税が6倍になるの?
   
そもそも土地を持っているだけで
どうして税金を払わないといけないの?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
     
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